珍妃の井戸

浅田次郎っていう人は、僕にとってはちょっと不思議な作家の一人。

まず第一に題材の広さ。現代だけの話でなく、時代小説があったり、日本だけでなく中国の話だったり、人間ドラマだけでなく推理小説っぽい部分や、ファンタジーっぽい部分もあったり、とにかくそういう間口の広さに驚かされる。
次に映像化作品の品質。アカデミー賞鉄道員は言うまでもないけれど、地下鉄に乗っての映画も泣けたし、12チャンネルの壬生義士伝も切なかった。あとNHKでやってたシェエラザードも面白かった。
そしてこのように、数々の人気作と受賞の栄誉にも輝いている現代の人気作家、という割にはちょっとマイナーな感じ。まあこれは単なる僕の印象だけどね。

まあ、そんなことはともかく、読みやすいし、ハートウォーミングで気持ちいいし、好きな作家の一人なわけだけど、この珍妃の井戸。全然予備知識なく読んでたら、実在の人物はともかく、春児とか梁文秀とかなんとなく聞き覚えがあると思ったら、蒼穹の昴の続編だったのね。

特徴的な構成とあいまって、いつの間にか話に引き込まれていき、あっという間に読み終えてしまったように、なんだか色んな人の話に振り回されて、結論としてはだれが本当のことを言っているのかよくわかんないもどかしさは残るけれど、面白かったです。そりゃ、前作とは比べちゃだめだけどね。
強いて言えば、なぜ彼ら4人がこのことに強い関心を示したのか、が僕にはよくわからない。それは血統によるものだという説明はあるものの、そういう感覚を持ったことがないので、よくわからない。そういうものかね。

今調べたら蒼穹の昴も映像化されるみたい。楽しみ。

珍妃の井戸 (講談社文庫)

珍妃の井戸 (講談社文庫)