第三の時効

横山秀夫。この人の小説も面白いな。もはや語りつくされていることだけれど、影の季節などのように、現実にはありがちなのに普通はあまりスポットが当てられないようなところにドラマを見出したり、半落ちのように誰もが予想しないような結末を用意していたり、またそういった気をてらったところだけでなく、クライマーズハイ出口のない海のように、本当のヒューマンドラマがあったりと、いつも外れのないエンターテイメントを用意してくれる。

もともとは全然知らなくって、クライマーズハイのテレビドラマ版(これも佐藤浩一の暑っ苦しい感じがなかなか印象的だったように思う。映画版は見てない)をたまたま見たことがきっかけで、そのときに耳にしたフレーズで、ああそういえば半落ちって話題になったなと思い、よく知らないけれどとりあえず一度読んでみるかとブックオフで漁っただけれど、当時はこれらのメジャーな作品は100円市場には流れてこず、そのときは仕方なく、手に取ったのが影の季節だったと思う。でも最初に読んだのがこれだった、というのが、この人の大いなる特徴の一面を認識することができ、かえってよかったとも思うけどね。

その後はもうほとんどの作品、動機、半落ち、深追い、クライマーズ・ハイ、影踏み、臨場、出口のない海、震度0を読了。映像化された作品も多いけれど、こちらは残念ながら、上述のテレビ版クライマーズ・ハイとときどき早く帰宅したときに臨場、あとは半落ちの映画版をテレビでなんとなく見た程度。

それでこの第三の時効。こういう短編の続き物っていうのは、これはこれで好きなパターンで、まさに太陽にほえろみたいな群像劇、一話完結のテレビドラマを見てる感じで、エンタメとして本当に面白く、電車に乗っている時間が多いときなんかはあっという間に読み終えてしまうパターン。
特にそれぞれの班長がなかなか強烈なキャラクターで、もちろん各々が互いに反目しあっているところが面白く、僕はあまり縁がないけれど、ちょっとした大きな会社であればすぐに自分のまわりでもイメージできるような、たとえば第3営業部なんかに負けてたまるかとか、ちょっと変わってるけれど第21設計室長の天才的な技術には皆が敬意を払うとか、まあ、そういう環境的周囲的部分が特殊なキャラ達によるスーパーな出来事という部分を浮き上がらせず、いい感じのコクになってると思う。
まだまだ今後の続きが楽しみなシリーズ。もっとも、影の季節も臨場も続きを期待してるけどね。